嘘とワンダーランド

この気持ちを隠していたかったのに…。

いつの間にか抱いてしまった思いを消してしまいたかったのに…。

何も知らないまま、課長と離れたかったのに…。

「――若菜と別れたくない…」

呟くようにそう言った課長の抱きしめている腕が震えていた。

「――そんなことを、言わないでくださいよ…」

眼鏡越しの瞳に向かって、わたしは言った。

「この気持ちに気づかないまま、課長と離れたかったのに…。

何も知らないまま、課長と別れたかったのに…」

なのに、気づいてしまったこの気持ちを認めないといけないなんて…。

いつの間にか芽生えてしまったこの思いと向きあわないといけないなんて…。

「――あなたのことを好きになりました」