嘘とワンダーランド

「俺、トイレに行ってくるわ」

京やんはそう言うと、その場から立ち去った。

「トイレって、さっきも行かなかったか?」

呆れたように呟いたわたしだけど、緊張している彼の耳にその声が聞こえることはなかった。

「京極は?」

京やんと入れ替わるようにして、課長が会議室に入ってきた。

「京極さんはトイレに行ってます」

わたしは答えた。

「そうか」

課長はそう言うと、わたしの隣に並んだ。

ストライプの模様が入った黒のスーツが長身の彼によく似合っている。

その姿に一瞬だけ目を奪われそうになったと言うのは、ここだけの秘密だ。

課長と2人きりになって心臓がドキドキと鳴っているのは、緊張しているからだと言い聞かせた。