嘘とワンダーランド

「――結婚するから、もうつきあえないんだよ…」

一体何の夢を見ているの?

わたしは課長の寝顔を見つめた。

「――もう許してくれ…。

俺のことは一生恨んでくれても構わないから…。

だから、許してくれ…」

課長はうんうんとうなりながら、呟くように寝言を言っている。

「課長…?」

彼の様子からして見ると、ひどくうなされているようだった。

これは起こした方がいいのかも知れない。

そう判断して課長の肩に手を伸ばそうとした時、
「――千沙…」

彼の唇が動いて、音を発した。

「えっ…?」

そう呟いた声は、自分でも驚くくらいにかすれていた。

今、何て言ったの?

課長が音を発したその名前は、わたしの聞き間違いであって欲しいと心の底から願った。