嘘とワンダーランド

「一生眼鏡で行くんだったら大切にしろっつーの…」

呆れたように呟いた後、課長の寝顔に視線を向けた。

眼鏡をかけていないその顔は無防備で、そして少しだけ幼く見えたような気がした。

課長の年齢は28歳と、お姉ちゃんと同い年だったはずだ。

「結構かわいい寝顔なんだな」

そう呟いた後、課長の黒い髪に手を伸ばした。

指通りがいいその髪は、サラサラとわたしの指をすり抜けた。

「本当に、わたしは課長にどう思われているんだろう…?」

プライベートには干渉しないって言ったくせに、京やんと一緒にいたことを注意してきた。

一緒に食事に行ったり、名前で呼んできたり、抱きしめてきたり…としてきた。

課長が何を考えて、どう思っているのかよくわからない。

こんなことをしてきたのは結婚から半年が経った最近のことだけど、どうして急にそんなことをしようと思ったのかな?

心境の変化を起こさせるような出来事があったのかと思ったけれど、特に何も思い浮かばなかった。