嘘とワンダーランド

その通りである。

課長の言う通り、先に千沙さんの名前を出して彼女の話をしたのはわたしだ。

だけど課長が千沙さんの話をしたとたん、わたしは胸が苦しくなった。

それに対して、矛盾しているのもいいところだとわたしは思った。

自分から先に千沙さんの話題を提供して置いて、胸が苦しくなったからやめろだなんて矛盾している。

「課長の口から千沙さんの話を聞きたくないです」

わたしはそう言うと、抱きしめている課長の手を離した。

「若菜、ごめん。

言い過ぎた」

課長が謝ってきたけど、
「会社ですよ、課長。

会社ではわたしのことは名前じゃなくて、“福田”と旧姓で呼ぶ約束でしたよね?」

そんな約束をした訳じゃないけど、わたしは言った。