嘘とワンダーランド

そう言った課長に抱きしめられて、
「ここ、会社…」

戸惑いながら解放を求めても、その腕を離してくれなかった。

一体課長は何がしたくて、何が言いたいのだろう?

「か、課長だって、さっき千沙さんと一緒だったじゃないですか」

ほとんど苦し紛れに、わたしは千沙さんの名前を出した。

わたしが千沙さんの名前を出したことに、課長は驚いた顔をした。

「見てたのかよ…。

あれは千沙が仕事でここへきたんだよ。

あいつ、保険会社の営業をやっててさ、この近くにある会社へこれから飛び込みで営業へ行くって」

「千沙さんの話をしないでください」

課長の言葉をさえぎるように、わたしは言った。

「千沙の名前を出したのは若菜の方からじゃないか」

話をさえぎられた課長は訳がわからないと言う顔をした。