そらと夏の日

そらは笑うのをやめて、うみへ向き直りました。うみに、悩みを聞いてほしいと思いました。

「あのね。そら、ひとりっこなの。だから今、おうちで一緒に遊ぶ人がいなくて」

そらが話し始めると、うみは「うん」と相づちを打ちました。

「子どもは、そらの他にもいるんだけどね。みんな、自分のきょうだいと遊んでるから、話しかけられないの。そらも、きょうだいがほしかった」

ぽつりと呟くと、うみは心なしか落ち着いた声色で「そっか」と言いました。 そして下を向いて、砂浜を見つめて、眉を下げました。小さく「ごめんね」と呟いたのが、そらには聞こえました。けれど、何が『ごめん』なのかわかりません。

海が波を打ち返す音が、辺りに響きます。ピュウとひとつ風が吹いて、さわさわと近くの木々が揺れたとき、 うみが顔を上げました。
そしておもむろに、そらの手をとって、握りしめました。そのとき、そらはとても驚きました。繋がっているうみの手が、薄く透けていたのです。

「うみ、手、どうしたの」

怖くなって、今にも消えてしまいそうなうみの手を、そらはぎゅっと握り返しました。