「いっけない、お姉ちゃんのワイシャツどこにしまったか知ってる?」
「もうおっちょこちょいなんだから。昨日隣の部屋のクローゼットにしまってたでしょ。」
朝からお姉ちゃんはドタバタしている。大学を卒業したお姉ちゃんはリクルートスーツではなく、真新しいスーツを着ている。今日からは夢だった教師になるお姉ちゃん。いつに増してかキラキラしているように見える。
「胡桃、真面目になりすぎないように楽しみなね。」
めったにいないお母さんがお姉ちゃんのためにお弁当を作りながら言った。

私が生まれすぐに父親が事故死しており、母は女手一つでお姉ちゃんの胡桃と、9歳下の妹である私 明花理の2人を育ててくれている。ちなみに母の仕事は医者で、いっつも忙しいので家のことや私の面倒を見るのはお姉ちゃんだった。

「なんかお姉ちゃん大人っぽくなったね。」
「まあね、もう大人だから。じゃあ行ってきます。」
「あたしも行ってきます。」
「二人とも気をつけてね。」
新学期の朝が始まった。