「おっおい!」

ガシャンッという大きな音と、ふわりと浮かんだ感覚で、次に来るであろう衝撃に備える

しかし、予想外のことが起こった。

わたしは柔らかい感触に包まれ、ふとしたぬくもりを感じる。

ゆっくり目を開けると、誰かに支えられている私の自転車と、3mくらい後ろに倒れている自転車。

そして、すごく至近距離で顔を覗き込んでくるあいつ。

耳たぶに吐息がふれる。

「ったく。お前はドジなんだからもっと気をつけろ!」

そんなセリフを吐くわりには、繊細な宝石に触れるみたいに私の体を起こしれくれて、くすぐったいけどふわふわしたような気持ちになった。

恥ずかしいけど心地よいような感じ。

この感じ・・・嫌いじゃない。

こいつは吉野 圭。こいつは小学校で6回連続で同じ班になり、同じ中学の同じクラスの隣の席のいわば超腐れ縁だ。

しかも、私はたぶんこいつが・・・好きだ・・・

「わぁぁ」

変な声を思わず出してしまった。

だって、顔がすごく近い。こんなに至近距離にいたら・・

こんなんだったらしっかり顔を洗って歯をきちんと磨いてこればよかった

「ったくもぉ。遅刻するぞ」

そういって自分の自転車を起こす。

公園の時計はもう7:20分をさしている

間に合うかどうかは、運に任せるしかない。

凍えて赤くなっている手を温めるふりをして、きっと寒さのせいだけじゃない真っ赤なほっぺたをさわってみた。

さっきまでのあいつの吐息がかかっていたみみたぶもついでに触る。

なんか、あいつの生命力が注がれてくる気がした。

私は今とっても幸せ