黒いリストバンドをした手首が、五郎の茶色いイガグリ頭を撫でる。


それをたどって視線を上にずらすと、こっちを向いて笑ってる瞳と目が合った。



「夏。好きだろ百」


「え……」



もも、って、言った。

初めて、呼ばれた。はず。

確かに初めて聞いたはずなのに、なつかしい響きが鼓膜を揺らす。



「うん、夏、好き」



まるで太陽を味方につけたみたいに黒髪をキラキラ輝かせて、空の青と雲の白と向日葵の黄色を背負って、要くんは笑っていた。




「おれもすき」




そう言った形のいい口の端がまた上がって、目と頬はいたずらっぽくゆるむ。


な、なんだこれ。キラキラしてる。



「だからまた遊びに来る」



……熱中症かな。


なんだか頭がぼうっとするし

目は、なぜだか要くんからそらせないし



「夏持って、また来るな」



夏のはじまりって こんな感じだったっけ。