「おい!花火の音はお前たちか!うるさいぞ!」
「うわっ、やべ」
突然、空き地の入り口から甚兵衛姿のおじさんが登場。
あ、あの人この空き地の隣の家のお説教おじさんて呼ばれてるしつこい人、だ。
あれ、怒ってる。
「花火してたのお前たちだろう!近所迷惑だぞ!話を聞きなさい!」
「逃げるぞ、百っ」
「えっ」
手を引かれて、立ち上がる。
反対側の出口へ走る。
「こら!待ちなさい!」
「捕まったら面倒だからいったん撒く!」
「は、はいっ!」
空き地を出ると、そこは見慣れた故郷の道路。
私の足が遅いから要は私の手を離さず引き続ける。
嫌だとは思わない。
そう、そうだよ。
お母さんに言われなくても要の言う通り、好きな人くらい自分でつくりたい。
なんだか楽しくなって、笑いがこぼれた。
「楽しそう、百」
「楽しいよ、要もでしょ」
「もちろん」
笑いながら走る。
ひぐらしの声。
輝くアスファルト、緑の木々たち、道端の向日葵。
草のにおい。
要の半袖シャツ。
大切そうに握られた朝顔のうちわ。
夏でいっぱい。
夏が散らばっている。
今度はふたりで何をしよう。
夏休みをどうやって彩ろうか。
でもあとで、花火片付けに戻ろうね。
───『夏狩り過程』【完】.


