「……あ、あれ」

ナノさんが自身の左目に手をやる。ゆっくりと数回瞬きをしながら、瞼をさする。私は彼に添えた両手を放して膝の上に置いた。

「サキ……俺の眼は……何色だ……?」
「澄んだ、紅色です……」



何が起こったのか。




確かにさっきまで、ナノさんは目も口も鼻も、原型が分からないくらいにぐちゃぐちゃに爛れていたはず。それなのに、今私が彼の瞳の色を答えて、


「……正解だ」

答えを得るなんて。

有り得ない話。

(私が彼に憐れみを抱いた瞬間に、彼の醜かった顔が剥がれ始めた)

「サキ」
「キミを選んでやはり正解だった」




「……俺を、愛してくれませんか」





「……」
私には拒否権など無かった。断れば殺される。RPGの村人の願いのようなものだ。

(「いいえ」を押しても、無限にループする)

何故言いきれるかって?そんなもの簡単じゃないか。


「……分かりました」






全ては鈍く光った紅い瞳が物語っているでしょう?