軽い脳震盪。

しばらくして意識を取り戻したあたし。
車の中で横になっていた。
車の中にはまだ旦那と海斗の姿があった。

『桃子?』

海斗が気付いた。

『海斗…』

あたしは頭を押さえながら起き上がって旦那に言った。

『わかった?これで。あたしの気持ち』

『………』

『不倫を正当化するつもりはない。でも、あなたの優しさは間違ってる。本当に助けて欲しいときに助けてくれないあなたにもうあたしはついていけない』

『………』

『海斗…。あたしが負担になるようなら海斗もこのまま逃げてもいいんだよ?面倒だと思ったら逃げてもいいんだよ?』

『桃子…、俺は…』

『とりあえず今日は帰ろう…』

あたしは無言の旦那と家に帰った。
本当はどれだけこのまま海斗の傍にいたかったか…。
海斗に言った言葉は全部強がり。
海斗がこのままあたしの前から消えてしまったら…。
面倒だからっていなくなってもおかしくないとは思いながらも、このまま傍にいて欲しいと願っていた。

あたしはこの夜、全く眠れなかった。

旦那は一言だけあたしに言った。

『これだけコケにされても別れたくないって思ってる。でも、桃子の気持ちはわかったから…』

もう、あたしの心は旦那の言葉を受け止めらなくなっていた。
『愛してる』
『まだ、好きだから』
『別れたくない』
『一緒にいたい』
そんな言葉をもらっても少しもココロは揺るがなかった。

確かに不倫は悪いことなんだろう。
人の道に外れているんだろう。
別にこの家庭から逃れたくて不倫をしたわけじゃない。
家庭がうまくいってない時に、あたしは海斗に逃げてしまったんだろう。

『海斗へ。
 あたしはやっぱり海斗が好きです。
 今日、旦那と話して気持ちが変わってしまったのならそれは仕方ないけど、
 とりあえず、今日は面倒なことを頼んでごめんね』

海斗にメールを送ってあたしは眠れない夜をただ過ごした。