しばらく練習して30分の休憩が入った時だ。



輝にやたらと話しかける後輩の女の子がいた。



入学式の日かわいい1年生がいると話題になった子だったと思う。



輝も男だけあって嬉しそうに相手していることが、どこから見ても分かった。



「どーしたんすか先輩」



輝のほうをガン見しているのがおかしく思われたのか、伊澄くんが話しかけてきた。



ハッとして輝から目を逸らす。



「ううん!なんでもないよ!」



「冷泉先輩、モテモテっすね」



まるで私を試すかのように、伊澄くんは笑った。



「あんなのどこがいいんだろうね〜」



私は苦笑して、ごまかすように水を口に含む。



「先輩あんなに鼻の下伸ばしちゃって…下心丸見えっすね」



伊澄くんは一体なにが言いたいのか、今の私に探ることはできなかった。



「可愛い子から話しかけられたら、男なんてみんなあんなでしょ」



ふふって笑う私の顔を
伊澄くんは冷めた目つきで見、



「あの子ではなりませんけどねオレは」



そう言い残し、友達の元へと行ってしまった。



「なんなの…」



つぶやいた声は
騒がしい声にかき消された。