分かっているのに、音のない痛みが胸を襲って仕方がなかった。



言いようのない痛みが、胸を引き裂くようで。



この痛みの正体は、分からない。
でも分からないままでいい。



知ってしまえば、私が私ではなくなってしまう気がする。



それが怖い。



おもいきり伸びをして、全てのわだかまりをリセットして、カーテンを開ける。



真夏の青空と入道雲。



耳をつんざく蝉の声。



陽炎のできる道路に、虫かごを持って歩く親子。



気持ちのいい朝を感じてから、私はリビングへとむかった。