「奇跡とか希望とか、そんな大袈裟なものじゃなくてさ」



私の頬に触れ、涙を払い、



「雨が降れば晴れるとか。夜がくれば朝がくるとか。波がよせれば返すとか。お母さんが起きることなんて、きっとそういうことだよ」



輝は、にっこりと笑った。



私の不安も絶望も拭い去るように。



「お前が信じなきゃ、なにも始まんないんだよ雫輝」



輝の言葉一つ一つに、ただ頷くことしかできなかった。



でも、強くなろうと思えたんだ。



泣いてばかりじゃ、起こるものも起こらなくなってしまうから。



「泣くのは、何もかも失くしたときにしよう」



「うん……っ」



精一杯の笑顔を返すと、輝も優しく微笑み返してくれた。