「なん……で…?」



扉が開き、そこに立っていたのは



「て、る……」



家にくる理由も、私に会いにくる理由もない輝だった。



「雫輝」



輝は私を呼びながら、近づいてきた。



悲しそうに表情を歪めて、ゆっくりと。



また涙が込み上げてくる。




「輝……、お母さんが……っ」



会いたくても、頼りたくても、声が聞きたくても、あてにしてはいけないと思ってた。



「お母さ、ん…が……っ」



輝には大切な人がいるから。



求めてはいけないと思ってた。



「…もう、何も言わないでいいよ雫輝」



ギュッと強く、だけど恐ろしいほど優しく、輝は私を抱きしめた。



輝の背中に回した腕が震えている。