「雫輝、なんか食べたいものあるか?」



「何も食べたくない」



「何かは食べないとだめだ」



「いらない」



お父さんが何か言いかけようとしてたのを知りながら、自分の部屋へと戻った。



辛いのは自分だけじゃないことくらい分かってる。



悲しいのは自分だけじゃないことくらい分かってる。



だけど食欲も物欲も、今は人間かと疑うほどに皆無だ。



静寂に包まれた部屋では、時計の針が動く音だけが響き渡っている。



ゆっくりと目を閉じると、そのまま長い眠りにつきたい衝動に駆られる。



___できないのは、十分承知の上で。