体を起こしてから2時間。



ぼーっとしている私の耳に、扉を開ける音が響く。



「ただいま」



お父さんだ。



ショックを受けているのはお父さんも同じはずなのに、私とお母さんのため働きに行った。



私は動くことでさえ嫌なのに。



「おかえりお父さん」



「電気もつけないで何してるんだ」



真っ暗だった部屋に明かりが灯る。



しばらく見なかった光に目を細め、静かに呟いた。



「つけたって喋りたい人がいないもの」



自嘲気味に笑った声が宙を舞い、余韻と共に去った。



お父さんは困ったように目を逸らし横を通り過ぎる。