明日から夏休みに入る。



輝とはもっと話す機会が減るし、きっと今まで以上に距離ができるだろう。



それが寂しくもあり、考えずに済む安心もあった。



輝のこと気にして周りを見るのはもう疲れた。



「あ、ここまででいいよ伊澄くん。ありがとう」



「はい、あした頑張りましょうね先輩!」



少しだけ首を傾けて笑う伊澄くんは、まるで子犬のような。



風になびく癖のついた髪。



「うん!お互い頑張ろうね!」



笑いかけると、伊澄くんがフッと目を伏せた。



不思議になって首をかしげる。



「オレは輝先輩みたいに、目離したりしませんから」



上目遣いで、



「…え…?」



悪戯に笑う。



「また明日先輩!」



いきなり明るくなる伊澄くんに戸惑いながら手を振る。



いつものように私が先に目線を外し、家に入った。