「そうだな」



輝が呟く。



ドキッと心臓が鳴った。



「こんなことで怒って悪かったな」



こんなこと。



そう輝は強調した。



「授業戻っていいよ」



輝の影が動く。



砂利を踏む音がどんどん遠くなっていく。



そして私は、取り残された。



『こんなことで怒って悪かったな』



腕を掴んだのは輝なのに。



『授業戻っていいよ』



連れ出したのは輝なのに。



自分勝手だと輝に向けた言葉が頭に浮かんだとき、それは自分に向けるべき言葉だと同時に思った。



私こそ自分勝手だ。



輝なんかよりずっとずっと



自分勝手だ。