「開けてください」



お母さんの声だ。



遠い記憶から、蘇るお母さんの声。



あのときのままだ。



カーテンが開き、お母さんの姿が見える。



「…っ」



「雫輝」



お母さんだ。



私の、お母さんだ。



「おかあ…さん…」



「雫輝!」



お母さんの胸に飛び込んだ。



お母さんが病人だってことも、お父さんが言ってたことも、そんなこと全部忘れて。



「お母さん…っ」



ずっとずっと、聞きたい声だった。



ずっとずっと、欲しかった温もりだった。



「苦労かけてごめんね雫輝」



そんなお母さんの声に、ただただ首を振る。