「雫輝!?!」



教室の扉がガラッと開き、輝が大きな声をあげながら入ってきたのは、授業の始まる5分前だった。



「な、なに輝…」



「は?」



返事をすると、輝はキョロキョロしていた目をこちらに向けた。



私を訝しんでいるようだ。



「おまえなんでいんの」



「学校にいちゃ悪いの?」



このやりとりはほぼクラスの全員に聞かれている。



ましてや窓際の私と、扉の方にいる輝の距離で話しているのだ。



もしかしたら隣のクラスにも聞こえているのかもしれない。



「何言ってんのおまえ」



「あんたがなに言ってんの」



私が目線を逸らしながら言い放ったとき、輝は動いた。



足早に私の元へ来ると、



「ちょっと来い」



いつもより少しだけ力を込めて、私の腕を掴んだ。



「いっ」



美涼を見ると「先生にはうまく言っとくから!」とでも言いたそうに親指を立てた。



私は違うと首を振ったが、その言葉が美涼に届くことはなかった。