「…ありがとう」



もう一度お礼を言うと、伊澄くんが頭をかいて困った顔をした。




「また泣くのやめてくださいね。泣きたいのオレっすからオーレ」



伊澄くんはそうやって、いつも私が辛い思いをしないように、私の前では笑ってくれる。



でも気づいた。



それに甘えるのが私の役目なんだってこと。



「んじゃ、さっさとお参りして、戻りましょ」



「そうだね」



にっこりと笑うと、伊澄くんは真っ直ぐ前をみて歩き出した。



見上げた顔は、1人の男の人の顔だった。



私が思ってるよりずっとずっと伊澄くんは大人で。



いつも甘えてばかりの私の方が、まだまだ子供なんだと思い知った。