突然、伊澄くんが歩を止め、隣の影が消えた。



私は少しだけ前に出てから振り返る。



「…伊澄くん?どうしたの?」



伊澄くんは、力のない目で私を見ている。



僅かに首をかしげた私を見て、冷ややかに笑った。



「好きな人いないのって先輩…それ先輩が言います?」



「…え…?」



なんだか怖かった。



伊澄くんの目が、口が、笑っているのに笑っていないようで。



「先輩の好きな人は、輝先輩ですよね?」



そうして伊澄くんの口から出たのは、私の話しだった。



「な、なに言ってるの伊澄くん…」



訳が分からず、苦笑いをこぼす。



「いい加減、諦めるための理由探すのやめたらどうです?」