「前の彼女の麻里チャンが忘れられないんだって。」
「あいつは麻里ちゃんが死んだ日から、いつも自分を責めてた。」
「麻里チャンを殺したのは自分だって。それをいつまでも引きずって知佳ちゃんをちゃんと愛せない自分が情けないってずっと言ってた。」
「今でもすぐに麻里のところに行きたいって。でも今ここにこうして生きているのは知佳チャンを一人にできないからだって。」
あたしは涙が止まらなかった。
あれだけ泣いたのに、涙は枯れることを知らないらしい。
「でも……酒呑んでたらずっと麻里のところ行きたいってしか言わなくなって……」
「俺達もこのままはヤバイと思ってさ。タクシーで家まで送ったんだよ。」
「でも家でまた飲んだみたいでさ。睡眠剤も一緒に飲んだみたいで、倒れて救急車で運ばれたらしい……。そしてそのまま……。」
「……急性アルコール中毒?」
あたしは初めてのデートのときのヒロアキの言葉を思い出していた。
「そう……。」
彼は静かに頷いた。

