少し落ち着いた頃にはもう夕暮れだった。
一人の若い男の人があたしに声をかけてきてくれた。どこか見覚えのある彼は日に焼けた筋肉質の坊主の男の人だった。
「知佳ちゃんでしょ?」
彼もまた真っ赤なウサギの眼をしていた。
彼もきっとたくさん泣いたのだろう。
「ヒロから知佳チャンのこと聞いてたよ。」
「誰…ですか?」
不幸のどん底の中で、少しだけ冷静なあたしがいた。
「俺?俺はヒロの同僚。知佳チャンの家の隣でも仕事してたじゃん。」
あたしは、記憶を辿った。
でもこの状況では、彼が誰なのかよくわからなかった。
あたしがコンビニでメールアドレスを渡した時一緒にいた同僚の人だったと少し時間が経った後で気がついた。

