人の出入りが多いことを除いては、いつもと変わらない玄関先。
私達の関係はお互いの親は知らなかった。
あたしに至っては家族だけではなく、友達にも誰にも言わなかった。
ヒロアキの家のインターホンを鳴らして家に入ると弟とヒロアキの父親らしき人が深々とお辞儀して出迎えてくれた。
あたしはまだヒロアキが亡くなったこと信じていなかった。
信じていなかったのではなく、信じたくなかった。
泣き腫らした後なのだろうヒロアキの父親も弟も赤い眼をしていた。
玄関をあがり、案内された部屋に入った。少し薄暗い仏間に顔に白い布をのせたヒロアキがいた。
近くには母親らしき女の人が泣きじゃくっていた。
母親だけじゃない。
その部屋にいた10人弱の人が涙を流していた。

