どのくらい時間が経っただろうか、ふいに先生は抱きしめるのをやめた。

そして先生はあたしの顎を引き上げたため、あたしたちは見つめ合う形になってしまった。

「先生。」

そう言ってハッとした自分とほぼ同時に、先生も優しく笑って言った。

「もう、先生じゃないから。」

「村上さん、じゃなくて……陽さん。」

「さん。もいらない。」

そう言ってまたからかうように笑った。

「陽……。」

急に恥ずかしくなって今にも消え入りそうな声で呟くと、先生、いや陽はあたしに人差し指を立てて、もう一回言うように言った。

「陽。」
そう言うと、陽はあたしを引き寄せて唇を重ねた。


息が出来ない程、甘く、熱いキスだった。


唇、耳、また唇と、時には啄むように、時には奥深くまで。

何度も、何度もあたしたちは、優しいキスを2人で長い間していた。


幸せいっぱいになったあたしは、また涙が出てくる。

「相変わらず、泣き虫。」

からかうように笑う先生に、あたしも一緒になって笑った。


5月の空は、空気が澄んでたくさんの星が瞬いていた。