鼻をすするあたしに気付いた先生は、あたしの正面に来て、涙をぬぐってくれた。

「知佳、鼻水出てるぞ。」

そう言って和ませてくれた先生の言葉に、思わず笑ってしまった。


「嬉しいのか、どうしていいのか、なんかよく分からなくて。」

そう言うとまた、涙がこぼれてきた。

先生は正面からあたしのことを抱きしめてくれた。

「先生、スーツ汚れます。」

「いいよ。」

抵抗するあたしを先生は、余計に力を込めて抱きしめた。
 


「知佳の答え、今日は聞かない。しっかり考えて。俺も知佳と出逢ってからもう８年経って、もう知佳の知っている俺じゃないかもしれない付き合うとなると、知佳ももう２５歳でしょ。結婚とかも色々と考えるだろ。色んなことで普通の人がしなくてもいい苦労をかけるかもしれないから、冷静になってよく考えて。」


先生に抱きしめられたまま、あたしは先生の胸の中でその言葉を聞いていた。