待ち合わせの時間から５分して、先生は到着した。

スーツを着た先生を見たのは、２回目だった。見慣れないスーツ姿にあたしはまた、息が出来ない程鼓動が早くなっていた。


「ごめんな。仕事が押してしまって。」


そう言いながら席に座る先生は依然と全く変わらない笑顔を見せてくれた。

「どうした？」

あたしがスーツ姿の先生をまじまじとみていることに気付いた先生はそう尋ねてきた。

「先生のスーツ、久しぶりに見た。」

「え？初めてじゃない？」

そう言う先生にあたしは、少し笑いながら、

「初めて逢った時、スーツだったじゃないですか。」

あたしの言葉に先生はびっくりした顔して

「よく覚えてるな。」

笑いながら言って、少しだけネクタイを緩めた。