「俺、結婚してないんだ。」

そう言われて固まった。


離婚という2文字があたしの頭の中を占拠した。

「離婚ですか?」

恐る恐る聞いた私に、電話の向こうでクスリと鼻で笑われたのが分かった。


「離婚どころか、結婚寸前で破局。」

色々なことが気になったけれど聞けなかった。


それ以上先生の傷を掘り返したくないと思い、聞くことは出来なかった。

電話の向こうで先生はきっとお見通しなんだと思った。


ふっと淋しそうに笑う先生にあたしは心が苦しくて、何も言えなかった。