「何か、あった?」


シンちゃんに尋ねると、シンちゃんは急にあたしの左手を握りしめた。

そして、左手の薬指を触った。

「知佳、これ見て。」

そうシンちゃんに言われて、自分の薬指を眺めると海ほたるの青白い光がラインとなり、マリッジリングのように光を放っていた。

「これ……。」
それだけしか言葉の出ないあたしに、シンちゃんは静かに言った。

「今の、俺の気持ち。お金なくて、指輪とか準備できなかったけど、結婚したいと思ってる。」
 
そう言ってくれたシンちゃんの気持ちが嬉しかった。

嬉しくてうれしくて仕方なかった。

けれど、頭のどこかで先生の言葉がよぎった。
『1番好きな人とは結婚できないんだよ。俺さ、そんなこと言われても、そんな馬鹿なことあるわけがないと思ってた。でも今になったらそのことがなんとなくわかるよ。』

あたしもなんとなく分かった気がした。


それでも嬉しかった。