後輩のオオイシ君が隣のベッドで治療しながら、あたしとミヤガワさんの話を聞いていたようで、

「ミヤガワさん、佐藤先輩は〝独身村の村長〟目指すらしいですよ。この間、飲んだ時に酔っぱらって宣言していましたよ。」

そう言うと、ミヤガワさんが腹を抱えて笑っていた。


「オオイシ君、そろそろあたし、独身村を脱出しますから!」
「佐藤先輩、相手いないでしょ。」

そんなやり取りを聞きながら、オオイシ君が治療していた100歳へのカウントダウンを迎えたイワイさんが本気で心配して、言ってくれた。

「佐藤さん、ワシの孫、紹介しようか?今年40歳になるけど、相手がいなくてね。見合いでもどうかな。」

「お気持ちだけ、受け取ります。」

あたしは笑いたくて仕方なかったけれど、ミヤガワさんは涙を出して笑いながら、

「イワイさん、佐藤ちゃんにあんたの禿げた孫はかわいそうだよ。それに今時、見合いは流行らないじゃろ。」

その言葉にまた4人で笑った。
 

今は本当に、仕事が楽しかった。

もちろん大変なことも多かったし、亡くなっていく仲のいい利用者との別れもあったりしたけれど、この人たちを元気にしたいと毎日、仕事も頑張れた。


自分が接する利用者が、笑顔でいてくれることが本当に幸せだと感じていた。