「3045円になります。」


お父さんとの間で会計する店員さんの声で、自分が先生に見惚れていたことに気が付いた。

一瞬、先生がこっちを見て、眼があった気がした。

気のせいだと思っている間に、あたしを乗せたワゴンは、シンちゃんのおばあちゃんの家に向かって発進した。  


あたしの隣では、相変わらずいびきかいて寝ているシンちゃんがいた。

その姿を見ながら、さっきの先生の姿と比べてしまい、シンちゃんが少しだけ嫌だと思ってしまった。

そして先生の姿を思い出して、あたしは切なくなった。


あたしの心の隅に未だ先生への恋心があることに気付かない振りをした。


先生を目撃して、先生にメールを送信するかどうか迷った。

先生はさっきあたしと会ったことを知らないだろう、このまま良き思い出として、あたしだけの胸の中にしまい込んでおこうと自分の気持ちに言い聞かせた。