だからあたしは話題を変えるために聞いた。


「先生は、今日どうしてここにいるんですか?」

「自分の母校の文化祭に、来たら悪いか?」


いじわるそうに笑いながら先生は言う。

「悪くはありませんけど。ただ先生の歳で知っている人もいないんじゃないかなって思って……」

「サキと知佳。俺の知っている人。」


またいじわるそうに笑う先生に、あたしは黙った。

何も言えなかったわけじゃなかった。

先生を忘れようとしているのに、やっぱりあたしよりサキの方が先に名前が出てきてしまったことに少し嫉妬してしまったからだった。