１年生が作った話題の映画の巨大な張り絵の展示品を見学していると後ろから、急に大きな声で名前を呼ばれた。


「知佳ちゃーーん。」


あまりのことに驚いて、あたしが振り向くと息を切らしながら廊下を走ってくるサキが見えた。

サキとの関係もあの一件以来、何にも変わっていなかった。

廊下ですれ違う時に少し話すだけで、先生の話はしなかった。


先生のことを話題にすることをあたしが避けていた。

「知佳ちゃん。探したよ。」

肩で息をしながらサキが言う。


そしてあたしの手を握って、ニコっと笑い、
「ちょっと一緒に来て。あの、知佳ちゃん借ります。」

それだけを友達に言って、あたしの腕を勢いよく引っ張って走った。


いつも以上に賑わっている渡り廊下の人ごみを掻き分けて、サキはグイグイあたしの手を引っ張って走った。


あたしは、サキが何をしたいのか理解できなかった。