中学を卒業する頃から、あたしには家で居場所がなかった。
祖父は認知症が進行して、よく迷子になって警察に保護されていた。
介護に疲れた祖母は少し鬱っぽくになっていた。


その頃、看護師で総師長になっていた母はキャリアウーマンだったから専業主婦の祖母との間には嫁姑戦争が起こっていた。

そんな家庭が嫌になったのか父親は愛人をつくり家には帰ってこない日々が続いていた。


それでも母は、家庭内ではにこにこしていた。

だけど唯一、家庭の中で母の味方のあたしには、2人きりになると少し愚痴を溢しながら、遠い目をしてこう言っていた。



「お母さんは、いつでもお父さんやおばあちゃんたちと縁を切れる。だけど知佳は一生切れないからね」


中学生だったあたしは、いつもこの言葉を聞くと、母がいつかこの場所からいなくなるのではないかという不安に襲われた。

そんな中でいつの間にかあたしは、みんなにいい顔することを自然と身に着けていた。