そんなサキから、珍しくあたしは話しかけられた。


「ねぇ、ねぇ、知佳ちゃん。知佳ちゃんも陽さんに勉強教えてもらっていたんでしょ?」

サキはニコニコしてあたしに聞いた。

「えっ?」


あたしは一瞬考えた後、戸惑いながら聞き返した。


「陽さん。家庭教師の陽さん。前に勉強教えてもらっていたんでしょ?」

ニコニコと笑いながら聞いてくるサキに戸惑った。


「サキちゃんも先生に教えてもらってるんだぁ。」

あたしは心の動揺が分からないように、気持ちが悟られないように笑顔で答えた。
 

「うん。受験まで数学と化学教えてもらうことになってるんだ。」

受験までというサキの答えにあたしは愕然とした。

確か友達が、サキはセンター試験受けるって言っていたことを思い返していた。

センター試験のある1月までサキは先生と会える。

サキに女として勝てる要素があたしにはないと分かっていた。
バイトだと頭では分かっていても、先生を独占したい欲求が強いあたしにとっては悔しくてたまらなかった。
 


その瞬間から、あたしの心の中に黒い闇が生まれようとしていた。

ヤキモチという暗闇が少しずつ大きくなろうとしていた。