自社のCMに起用されなかったら、一般庶民のアタシは高遠さんと関わり合うことすらない。

もちろんアタシが手にしている物なんて、ここ数ヶ月の物だったけれど、資料の少なかった高遠さんを少しでも応援したことになったと思っている。



遥香に、ふいに聞かれた。

「……未也、尾上さんてどんな人……」

「誰にでも人懐っこいよ。苦手な人なんていないみたい」



じっと見つめてくる遥香の視線は感情が伺えない。



「……関わらないほうが…イイみたい……」

「どうして、だって高遠さんと会えるかもしれないのに…」

「…だからよ…」



ちゅっと音がしてストローは中味がないことを示した。すかさず遥香は容器を握りしめた。



「……なんかイヤ……」

「そんなことないって。遥香、尾上さん知らないんだから気のせいだよ」

「……何の打算も見返りもなくすることかしら……」



打算も見返りもない友情を持つ遥香らしからぬ言葉だ。

「……無闇に信用しないほうがいいわ……」

すっと立ち上がった遥香が、袋にまとめた容器をダストボックスに落とした。

あたしも慌てて散らかしていたホイルを集めた。気が付けば休み時間もあと5分になっていた。それでも遥香の後についてトイレに向かいながら、まだ遥香の言葉は理解できていなかった。