意識していなくても、ふいに台詞が聞こえたり、立ち居振る舞いが蘇ったりする。

目で耳で、体中を使って舞台の空気までもを感じていた一瞬はあまりにも刺激が強くて、暫くは軽い興奮状態が続いていた。

それだけ初めて観た舞台が、インパクトがあったんだろう。




ぼんやり意識を手放してしまう月曜の午後は、魔の時間帯だ。

気を抜くと意識はパソコンから離れて、舞台の音や光を再現しはじめる。



「あーー」

伸びをして、また気合いを入れて仕事にかかろうとしたら、背後から笑いが起きる。



「だるそー」

ひらひらと紙の束を振りながら尾上さんが、こちらを見ていた。

「そこは乙女の仕草ですから、スルーの方向でお願いします」