「…俺もヤキが回ったもんだ」



階段を下りると、未也ちゃんの横顔が視界に入った。
つい裕也に対して、八つ当たりめいたことをしてしまった。

芸能界という世界を知らない者には理解出来ないこともある。

芸能人だからと言って、簡単に人を傷つけていい訳じゃない。

立ちつくした俺を見つけて、にっこり笑った顔がある。



何にも知らないこの娘が、傷を負う前に早く忘れてしまえばいい。

笑顔をつくりながら、俺はそう願っていた。