幕があがると、そこには戦国時代で、歴史の暗記があやふやなアタシはドキドキした。

ああ、どうしよう。ぜんっぜんわからなかったりしたら…

そんなアタシの思惑とはうらはらに物語は進んでいく。きらびやかな衣装と照明で気がつかなかったけど、俳優さんはみな声を張っている。もしかしたら、マイクなんて使ってないんじゃないかな。声を張り、大袈裟なくらい身振りをつけて心情を表す。

その声で。

アタシは高遠さんがわかった。高遠さんは武将の一人として、登場した。登場するなり、温かな拍手がおきる。待ちかまえていたファンからの期待が込められているみたいで、嬉しさと緊張が混ざりあう。

初っ端から笑いを取りにいく高遠さんを皆は期待していたようで、あちこちで笑いがおきる。ひとそれぞれ、くすくすだったりあははっと大きく口を開けていたりみんな舞台を楽しんでいた。



まるで舞台から風が吹いたみたいだった。登場人物の動きに、声にアタシの感情は揺さぶられ、笑ったり泣いたりすっかり同調していた。