アタシには『もしも基金』というものがある。なにか急な出費があった際に、手帳にしのばせていたそのお金を使うのだ。

毎月ちょっとづつ貯めていたそのお金を使うのは今しかないと思った。

そしてアタシはそのお金を握り締めて美容院の前に立っていた。



アタシは美容院というものが苦手だ。美容師さんという人は綺麗で、普段のケアの怠け具合を見透かされてしまいそうだったし、ほぼ初対面の人と何を話していいものか困るからだ。