舌を出してグロスを舐め取ると、蓮見マネが呆れたような顔をした。



「昼間から色気なんて出さなくていいですよ。今回の撮影には必要ないでしょう。今ので台詞飛んでないでしょうね?」

走り出した背中に小言がぶつけられたが、気にせずにその場を後にした。





胸に温かいものが生まれて、じわり全身に染み出して、からっぽだった体と心を満たしていく。

感情を出さないようにしても、唇が笑みを刻む。



もう間違えない。

早く仕事を終わらせて待っていてくれる人の元へと帰ろう。