「お前には迷惑をかけるね」

冷酒が瓶から音を立ててそそがれる。

「では一杯だけ頂きます」


飲むとなったら蓮見は強い。くいっと流し込むようにグラスを傾けた。


「橘さん、魚のいいのが入ってますが刺身にしますか」

「勝次さんに任すよ。二つ三つ作っておくれ」



今は嵐の真っ最中だとしても、橘代表も店長も落ち着きを払っている。

裕也の問題は一朝一夕に片が付くものではないと蓮見も理解していた。

俳優歴はあっても、裕也は芸能人としては新人だといえる。



心の内をうかがえないまま、なごやかに酒宴は進んでいく。