同じ場所、同じ時間に偶然を探しに行く。



大海の一滴を探し出すための努力を始めて一週間。時間を変えてあの場所に行くものの、掠りもしない。

あの時着ていたスーツは生地のいい仕立てのものだったから、どこかこの近くに勤めているサラリーマンだと思っていた。

仕事帰りを狙っても、ランチタイムを狙っても、あの爽やかな姿を見つけることが出来ずにいた。なんであの時、無理にでも連絡先をもらわなかったのか悔やまれる。

街路樹の柵にもたれて、携帯を操作する。今までなら、家で携帯小説を書いていた時間、今は誰とも知らない人を捜している。