木々の隙間から撮影場所が見えてきた。高遠さんが言っていたように、まだスタッフが忙しく動いて撮影器材を設置していた。

アタシと高遠さんは撮影の準備に追われている川へと道を下っていく。

一段低い所で、高遠さんが手を差し出してくれる。



「滑りやすそうだから掴まって」



変に遠慮して転ぶよりは、大人しくお言葉に甘えようと手を掴んだ。

アタシを見る目が優しく笑った。



「ゆっくり歩けばいいから」

「大丈夫です。そんなにいつも転ばない…」



そう言いながらもアタシの足は、湿った地面を滑った。



「ほらね」

滑ったせいで、おかしそうにくすくす笑いを漏らす高遠さんとの距離が縮まる。

半歩進めば腕の中に入ってしまうまで近づいていた。

かあっと頬が熱くなる。どうして、いつもこんなにそそっかしいんだろう。


「…すみません」

「気にしなくていいよ。そこ、俺もちょっと滑ったから」


そうして高遠さんは、ゆっくりと一歩を踏み出した。