笑顔の裏側に

蒼の話をまとめるとこうだ。

要はずっと医学部を目指していた。

もちろんそれは俺だって知っていた。

でもどこの学校を志望しているかまでは知らなかったし、要はまだ決まってないと言っていた。

でも本当は決まっていた。

いいや、決められていたという方が正しいかもしれない。

あいつは最難関校のT大医学部を目指していたのだった。

あいつの両親も医者で、長男だからか小さい時から医者になることが決まっていたらしい。

でもあいつは医者になることを嫌がってはなかった。

むしろ、自分の手で誰かの命が救えると医者という職業に憧れを抱いているようだった。

最初のうちはその強い想いに突き動かされて頑張っていたそうだ。

だけどだんだん勉強も難しくなって今までのようには行かず、少しずつ成績が下がり始めた。

そのことで両親に何度も怒鳴られ、傷つき苦しんできた。

どんなに怒鳴られても、思うような成績が取れず、お母さんが要を責め立てて言ったらしい。

出来の悪い俺たちとつるんでるから成績が上がらないと。

だから離れろ。

そうしなければ、学校側に掛け合って、俺たちにも直接、要の邪魔をしていると言うと。

だから要は俺たちからあっさりと離れた。