笑顔の裏側に

誰からだかは書いていないが、この繊細で綺麗な字はきっと要だ。

そんな俺のもとにいつも冷静で大声の出さない湊人が走ってきていきなり、

「歩、要が…。要が屋上から飛び降りた…。今救急車が向かってる!お前も早く来い!!」

そう叫んだ。

俺は頭の中が真っ白になって理解できなかった。

某然と立ちつくす俺の手を湊人が引っ張り、俺はただ無我夢中でついて行く。

そして俺たちが校庭に着く頃には救急車の中に要が運ばれていた。

俺たちは先生に頼み込んで、搬送先の病院まで連れて行ってもらった。

病院に到着し、受付で案内してもらう。

案内された場所は手術室の前で、手術中のランプが点灯していた。

俺たちは要のご両親に軽く会釈した。

それからすぐに医者が出てきて、みんなで慌てて医者に駆け寄った。

「要は!要は大丈夫なんでしょうか?」

お母さんが涙を堪えながら必死に言葉を紡いでいた。

しかし医者の表情は俺たちの不安をそそるものだった。

医者はお母さんがつかんだ手をそっと離し、静かに首をふった。

「手は施しましたが、残念ながら…。全身を強く打ち付けていて、運ばれてきた時にはもう意識はなく、そのまま…。」

お母さんは泣き崩れ、お父さんはそんなお母さんを支えながら、医者にお礼を言っていた。